アマチュア無線とは!
●アマチュア無線の定義
無線通信技術の商業利用が始まる前の時代では、マルコーニに代表される個人の研究者が技術的興味を満たすために無線機器を作って無線通信を行っていた。つまり、すべての無線がアマチュア無線だったのである。商業利用が始まってからも、無線通信技術の進歩にアマチュア無線家が果たした役割は絶大であった。特に当時は全く利用価値がないと思われていた短波帯を、低電力で全世界と通信可能な周波数帯であると確認した事は、全世界の研究家たちの業績に他ならない。そのため、タイタニック号事件を契機として国際的な電波管理の枠組みが構築され、電波の国家管理が始まった後の時代においても、アマチュア無線の保護には格別の配慮が図られ、幅広い周波数帯の利用が認められた。現在でも、中波からマイクロ波までの様々な周波数帯がアマチュア無線に割り当てられている。
携帯電話に象徴されるように高度化した現代の無線通信技術においては、アマチュア無線家の果たす役割は相対的に減少したと言えるが、しばしば争奪戦が繰り広げられるほど貴重な資源である周波数帯の利用が現代でも許されているのは、科学技術に従事する人材の育成に絶大な役割を果たしてきたからであろう。事実、電気・情報分野の第一線で活躍している科学者や技術者には、現役・元アマチュア無線家が多い。
日本でのアマチュア無線の歴史は、無線の実用化たる東京放送局(JOAK、現NHKの前身)のラジオ放送開始に先駆ける事数年、大正末期に「私設無線電信無線電話実験局」として認可された事から始まる。当時の電波は国家に管理されており、JOAKと言えども私設局に過ぎなかった。昭和に入ると国家総動員体制に組み込まれていき、各地で「無線義勇団」「国防無線隊」が結成される。しかし1941年12月8日太平洋戦争の開戦に伴い、同日、私設実験局の運用は禁止された。再開されたのは、戦後独立を回復した後の1952年のことであった。その後は、高度経済成長と、科学技術に対する国民の高い関心を背景として、日本のアマチュア無線は大いに発展し、1970年代には「趣味の王様」と呼ばれるブームとなり、1980年代には米国を抜いて世界最大のアマチュア無線人口を擁するに至った。
アマチュア無線の免許に年齢制限はなく、世代を問わずに楽しめる趣味である。電気工事、電話工事関係など、特にハム(アマチュア無線家)人口の多い職種も存在する。
アメリカ合衆国では、公共サービスとして地域パレードの通信などを行うなど、趣味の範囲を超える運用がされることがある。米国では開拓時代から現代までボランティアが大きな役割を果たしており、ボランティア活動にアマチュア無線が貢献してきたことから、国際法でのアマチュア無線の定義の範囲を超える運用を国内法で認めている。因みに、米国のアマチュア無線家の全国団体はアメリカ無線中継連盟(ARRL:American Radio Relay League)と言うが、これはボランティア活動のための通信を中継して広い国土に伝えるために、アマチュア無線家を組織化したことに由来する。
かつては外国の武力侵入があった際に、放送・商業通信が全て統制された中で、政府当局の厳しい監視を掻い潜り、スパイさながらに事件を世界中に伝えた事もあった(チェコ事件)。
このような社会的な観点はさておき、アマチュア無線を楽しむ人々は「純粋な遊びとしてみても、異国も含む見知らぬ相手との対話を求めるアマチュア無線には格別のロマンがある」と主張している(ヨルダンの故フセイン1世、モナコの故レーニエ3世もハムだった)。さらに、インターネットに比べてアマチュア無線は法律上、発信者の身元保証や通信内容について厳格に規定されており(虚偽の通信の禁止と罰則規定―電波法第106条)、法的には通信内容の正確性が担保されているにもかかわらず、現在の日本ではアマチュア無線家は減少傾向にある。これには以下のような理由があると見られる。
特定の相手との実用的な通信をしたい人は、購入するだけで簡単に使用できる携帯電話を使用する
見知らぬ相手や外国と交流をしたい人は、アマチュア無線よりも簡便なインターネットを利用してしまう
これらに比べて、アマチュア無線は免許(資格)の取得や監督官庁への開設手続きが必要であるなど、始めるまでのハードルが高い(後述の#免許制度や別項のアマチュア局の開局手続きも参照)ことが原因としてある。さらに、アマチュア無線をする人々が「ロマン」と感じる事柄に関しても、日本国内では「暗い」「意味がない」というイメージが浸透していることも原因のひとつである。
近年、周波数の枯渇が叫ばれるようになっており、趣味でしかないアマチュア無線が占有している周波数帯、すなわち一種の既得権益を減少させるべきではないか、という意見も多く聞かれるようになっている。また、アマチュア無線に対する日本国内のイメージも「King of Hobby」から「キモイホビー」「オタクの趣味」と変化してきており(ラジオライフ等により、"無線=盗聴"のイメージが流布された事も一因である)、趣味人口は減少している。こうした昨今の事情を反映して、例えば
アマチュア無線界から大きな反発を受けた電力線搬送通信やRFタグが認可される方向である
秋葉原などを中心に日本各地に存在した、アマチュア無線関連の専門店の閉店が相次ぐ
大手家電販売店も、収益の悪化しているアマチュア無線部門から撤退する、あるいは開店当初から扱わない
といった状況がある。このようにアマチュア無線を取り巻く日本国内の環境は明るいものではない。
[編集] 条約・法律上の定義
無線通信技術への貢献が評価されて周波数帯の利用を許されたことから、国際法・国内法ともにアマチュア無線は「個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」と定義がされている。
「国際電気通信連合憲章に規定する『無線通信規則』」における定義
アマチュア業務
金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、交信及び技術的研究の業務(第1条第78項)
日本国電波法における定義
アマチュア業務
金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。(施行規則第3条第1項第15号)
アマチュア局
金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な無線技術の興味によつて自己訓練、通信及び技術的研究の業務を行う無線局をいう。(施行規則第4条第1項第24号)
[編集] 免許制度
アマチュア無線を開局するには免許を受ける必要があるが、免許の制度は各国によって異なる。
[編集] 日本の制度
アマチュア無線に限らず、日本で無線の免許と言われているものには、
必要な技術・技能・法律知識を持っている人に与えられる資格である無線従事者免許
技術基準を満たす無線設備に与えられる免許である無線局免許
の2種類があり、無線局免許を与えられた無線設備を、無線従事者が運用することが求められる。詳細はアマチュア局の開局手続きを参照されたい。
無線局免許状が付与されると、一般の放送局同様にアマチュア無線局にも呼出符号(コールサイン)が与えられる。前述のJOAKの様式ではあるが、一見してアマチュア局であることが判別できる。
日本においては、アマチュア無線に限らず無線従事者資格に年齢制限は設けられていない。そのため小学生の合格者もしばしば見受けられる。だが仮に試験に合格しても、開局までにはかなりの日数と数万円の手続き費用(無線機などの機材代は除く)がかかる。このような手続きは公共財としての性格が強い電波を公正に利用し、混信を防ぐためのものであるが、アマチュア無線の敷居を高くする要因にもなっている。
日本のアマチュア無線技士の資格は、下位資格から次の種類に分かれている。
第四級(旧・電話級)アマチュア無線技士
第三級(旧・電信級)アマチュア無線技士
第二級アマチュア無線技士
第一級アマチュア無線技士
従来、第三級以上はモールス信号解読の技能試験が課されていたが、2005年10月1日から廃止されて符号及び通信略号に関する知識を問う筆記設問に変わり、また第二級・第一級にあっても聴き取り速度が軽減される事になった(国際電気通信条約との整合性の問題から。「#ノーコード・ライセンス」を参照)。これに伴い、申し出により、二級免許を取得した者は一級の電気通信術が、また電気通信術試験の廃止前に実施された国家試験に合格または養成課程修了により三級免許を取得した者は二級・一級の電気通信術が、それぞれ免除される。
なお、総合無線通信士など一部の職業(プロ)無線従事者の資格取得者は、アマチュア無線技士と同等の資格を持つとみなされる。詳細は無線従事者の項を参照されたい。
このように厳格な国家試験が行われる一方で、アマチュア無線機自体は免許が無くても購入できるため、不法開設が後を絶たないのも現実である。これら不法局に対しては、無線局から徴収された電波利用料を元に、各地区の総務省総合通信局が取り締まりに当たっている。また購入の際“アマチュア無線機を使用する場合は免許が必要”な旨注意する「指定無線設備の販売における告知」が販売店において行なわれている。
[編集] ノーコード・ライセンス
日本のアマチュア無線の免許制度の特徴として、入門級である第四級(旧電話級)はモールス符号の技能試験がないノーコード・ライセンスであることが挙げられる。かつて国際電気通信条約では短波帯を運用する無線従事者にはモールス符号の技能を求められていたにもかかわらず、空中線電力が小さいことを理由に、日本では短波帯の運用を電話級にも認めた。上級資格を取得すると、扱える空中線電力が大きくなるが、そもそも日本では住宅事情からして大出力無線の運用が難しい。
後述する米国の資格などに比べると、資格取得が容易でアマチュア無線人口の拡大に貢献し、通信機産業の育成に役立った反面、アマチュア無線家の質が低くなり違法な運用が増えた、上級資格を取得するモチベーションに乏しいので科学技術の発展に貢献しなくなった、という批判もある。
なお、現在ではアマチュア無線を除いてモールス符号が廃止され、その重要度が低下した事から国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則からモールス符号の技能要求は削除されている。そのため、日本と同様のノーコード・ライセンスを導入する動きが各国に広がっている。
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